ザ・ライフ・オブ・ワタシ

平凡の中の華やかを

Oscar Ziaについて語りたい

 ここ数日のブログ(4月27日5月2日)の中でスウェーデン人歌手、Felix Sandmanの「Boys with Emotions」という曲に触れました。


 この楽曲はヨーロッパ最大の音楽大会であるEurovisionのスウェーデン国内予選、Melodifestivalenの出場曲として書かれたもの。この曲を取り上げたのは、まさにこのMelodifestivalenを自分が実際にストックホルムまで観に行ったことや、彼が主演しているNetflixドラマ『クイックサンド』を観たこと、そしてこの楽曲の歌詞が有害な男らしさ(toxic masculinity)からくる男性のメンタルヘルスの問題を取り扱っていることが理由でした。

 

 中学生の頃からなぜだかスウェーデンのポップスが大好きな自分(有名どころだとRobynやZara Larsson、Tove Lo等)なのですが、先日またもや若者の精神問題を題材にしたスウェーデン産ポップがリリースされました(大丈夫かみんな)。


 それがこのOscar Zia「Antidepp」。ハートの目をしたスマイリーフェイスが可愛いジャケット写真だけど、周りに散らばるタブレットを見ても想像できる通り、「anti depression(=抗うつ剤)」を意味するタイトル。

 ここで楽曲自体について語る前に、Oscar Zia自身についても書いていきたいと思います。

 Oscar Ziaは1996年生まれの23歳。2012年に15歳の若さでスウェーデン版『X Factor』に出場したことがきっかけで、前述のMelodifestivalenにBehrang Miriというラッパーの客演で出演。惜しくも予選敗退するものの、楽曲自体は国内4位の大ヒットに(ちなみにもう一人のボーカルLoulou Lamotteは2020年のMelodifestivalen優勝グループThe Mamasのメンバー)。


 ここから間髪開けずに、次はセレブリティーによるダンスオーディション番組『Let's Dance 2013』に出場し、その放送期間中にソロデビューシングル「#Fail」をリリース。2014年にはセカンドシングル「Yes We Can」でソロとしてMelodifestivalenに初出場、決勝まで勝ち進み8位の成績を収めました。この大会直後にリリースされたデビューアルバムは国内3位の大ヒットとなり、ティーンのポップスターとしての地位を固めます。

 彼が再び大きな注目を集めたのは2016年のMelodifestivalen。


 出場曲「Human」の発表と共に、ゲイであるということをカミングアウトした彼。今までの比較的ライトな印象とは対照的な楽曲やパフォーマンスも評価され、見事に大会では2位を記録。シングルも自身最大のヒットを記録しました(個人的にはこの楽曲が優勝すべきだったと6年間根に持っています)。

 「Human」以降は今までのティーンアイドル像から少しずつ脱却していき、2018年からはスウェーデン語での楽曲をメインにリリース。「Kyss mig i slo-mo(英: Kiss me in slo-mo)」のMVはコメディでありポルノ。

 観るたびに筋肉量とヒゲが増えていくのも、以前のキュートなティーンエイジャーのイメージから、ホットな大人の男性(そして典型的なゲイ)のイメージにシフトしているようで観ていて頼もしい。でも結局いつまでもキュートなOscar、23歳。

(「Finns det någon jag kan hålla i?(Is there anyone I can hold?)」とリフレインするOscarのエロさ。)

 そんな彼が2020年4月にリリースしたのが前述の「Antidepp」。自分がスウェーデンのポップス情報を仕入れるときに必ず頼っているScandipopの記事によると、Oscarが失恋後に精神科医に通うまでの精神状況に陥ってしまったことがきっかけとなり作った曲だそう(スウェーデンの朝の情報番組『Nyhetsmorgon』でもインタビューを受けていましたが内容全く分からず)。

(『Nyhetsmorgon』での歌唱映像。)

 歌詞では「Manlighet, vem fan har definierat det?(男らしさなんてどこの誰が決めたんだ?)」や「Hur många glas vin ska de krävas?(あとどれだけのワインを飲めばいいのか)」など、有害な男らしさやアルコール中毒などの問題に触れているのにもかかわらず、Oscar本人はインタビューでこの曲をあくまでも「ハッピーな曲」と表している。それは確かに明るい色調のジャケットや曲調にも表れていて、実は、今なお抗うつ剤を使用している彼自身を励ますために書かれたものなのかもしれません。

 オーディション番組から生まれた歌手がスター街道を駆け上がっていくのを見るのはまるで隣人を見守るような気持ちになる。だからこそ彼が勇気をもってセクシュアリティや自身の精神問題をカミングアウトしていったことに対してとても感動したし、これからの彼の活動も楽しみでたまらない。

 

 以上、ただただ「好き」が溢れた記事でした。日本語はおろか英語での情報もあまり多くはないジャンルですが、この記事を機にOscar Ziaやその他スウェーデンのポップス、Eurovisionに興味を持ってくれる人がいたら嬉しいし、周りに共有できる存在が全くいないので仲良くして下さい。

 

リンク

Oscar ZiaSpotify / Apple Music / Instagram

Scandipop.co.uk ー スカンディナヴィアのポップスを追うならここ

wiwibloggs ー Eurovision関連最大のブログ

 

観て欲しいMelodifestivalen 4組

Loreen - Euphoria

Eurovision優勝。もはや生ける伝説。イギリス留学中にも何度も耳にした。

The Mamas - Move
今年の優勝者。ちなみに私は生で観て泣きました。

 

Eric Saade - Popular

自分がスウェーデンのポップスにハマるきっかけとなった曲。このダサさがいい。

 

Molly Petterson Hammar - I'll Be Fine
 Oscarと仲良しなMollyちゃんの出場曲。予選敗退したときにキレた。