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Melodifestivalenについて②

 

  今回の記事では、私が愛してやまないスウェーデンの音楽祭「Melodifestivalen」についてご紹介。愛が溢れる3本立てでお届けします。

 前回は「Melodifestivalen」という音楽大会そのものについてご紹介しましたが、今回の記事では今年2月に開催予定のMelodifestivalen 2021にエントリーされている楽曲・アーティストについてご紹介させていただきます。

Melodifestivalen 2021出場者ラインナップ①

 長々とMelodifestivalenについて書いてきましたが、今年2021年のMelodifestivalenは予定通りいけば2月6日に第1予選が開催される予定。それに先駆け、Melodifestivalen 2021の出場者と出場曲一覧をご紹介。非常に長いので速読する気持ちでご覧ください(五十音順)。

Alvaro Estrella「Baila Baila」(3)

 チリに出自を持つシンガー/ダンサー。2014年に「Bedroom」で出場も惜しくも予選落ち、昨年には同じくチリ系のアーティストMendezの客演アーティストとしてともに「Vamos Amigos」を披露し、決勝に出場、11位を記録しました。


 昨年披露した「Vamos Amigos」は、近年ヒットしているMalumaやBad Bunny、Rosalíaなどラテン音楽を意識した内容。コテコテのユーロポップ作品や壮大なバラード曲が上位に選ばれやすいMelodifestivalenの中で、自身のバックグラウンドとも共鳴する楽曲を送り込んだのは素晴らしいことだと思いますし、会場大盛り上がりの楽しいパフォーマンスでした。

 前述の通り、ダンサーとしても活躍してきたAlvaroですが、2012年には後述のDanny Saucedo「Amazing」のバックダンサーとしても出場を果たしました。

Anton Ewald「New Religion」(3)

 こちらも同じくダンサー、そして振付師としてのキャリアも持つシンガー、Anton Ewald。弱冠16歳にしてMelodifestivalen 2009でVelvet「The Queen」のバックダンサーを務めたあと、2012年にはDanny Saucedoの「Amazing」のバックダンサー兼振付師として出場。つまり先ほどのAlvaroとは既に8年前に同じステージでパフォーマンスしていたんです!分かりますか?この感動。

 メインアーティストとしては2013年に「Begging」で、2014年に「Natural」で出場し、どちらも決勝出場しました。特に前者は決勝で4位とEurovision出場は叶いませんでしたが、楽曲がスウェーデン国内で大ヒットしました。2016年から数年間はANTONとして世界に視野を広げた活動を展開*1、近年はモデル業で生計を立てていたそうですが、今回7年ぶりに満を持して出場します。

Arvingarna「Tänker inte alls gå hem」(6)

 1989年の結成からなんと6回目の出場となる、スウェーデンを代表するダンスバンド(Dansband)*2。初出場を果たした1993年には、「Eloise」で見事優勝を果たし、Eurovision Song Contestに出場、7位の好成績を収めました。

 ボーイバンド的立ち位置の彼ら、キャリア30年目に出場したMelodifestivalen 2019で披露した「I Do」はBackstreet BoysやTake Thatのようにキャリアを積んだボーイバンドにしか出せない渋みがあって非常に良かったです。

 また2021年のエントリー曲「Tänker inte alls gå hem」にはMelodifestivalenと縁の深いソングライター達が多数参加しており、その中にはMelodifestivalen 2020で「Carpool Karaoke」で出場し、予選敗退したもののThe Late Late Show with James Cordenで取り上げられるなど大きな注目を集めたNanne Grönvall、Loreenによる2012年のEurovision Song Contest優勝曲「Euphoria」など多数のEurovision関連楽曲を手掛けてきたThomas G: son、そして同じく多数のMelodifestivalen出場曲を手掛けるBobby Ljunggrenなどが含めれています。

Charlotte Perrelli「Still Young」(4)

 Arvingarnaと同じくこちらもMelodifestivalen常連のCharlotte Perrelli。Anders Engbergs、Wizexと2つのダンスバンドのメンバーとして活躍したのち、1999年にMelodifestivalen 1999に初出場。「Take Me to Your Heaven」でなんと優勝、その後のEurovision Song Contest 1999でも優勝を果たし、スウェーデンに当時4回目の優勝をもたらしました。2003、2004年と2年連続でMelodifestivalenの司会者を担当したのち、2008年には「Hero」で再び大会に出場、またしても優勝を勝ち取りましたが、Eurovision Song Contest 2008では18位と振るわず。Melodifestivalen 2012への出場をはさみ、今回7年ぶりの出演となります。

 また、スウェーデンを代表する女性歌手の一人である彼女は、2019年のEurovision Song Contestがスウェーデンのテレビで放送された際の解説者も担当。この大会が開催されたイスラエル出身のEurovision優勝経験者、Dana Internationalとのデュエット曲「Diva to Diva」もリリースしました。今回の出場曲のタイトル「Still Young」含め、スウェーデン1香ばしいDIVA。

Clara Klingenström「Behöver inte dig idag」(初)

 Melodifestivalen初出場となるスウェーデンはヴィスビュー出身の25歳。まだキャリアの浅いシンガーですが、同じくスウェーデン出身のVeronica Maggioなどを思わせる軽快なスウェーデン語ポップスが心地よいシンガーです。Melodifestivalenではどちらかというとインパクトの強いポップを歌い、豪華なステージパフォーマンスを行うアーティストが多い印象なので、彼女のようなシンガーがどういったステージを見せてくれるのか楽しみです。ちなみに出場曲「Behöver inte dig idag」は英語で「Don't Need You Today」という意味。

Danny Saucedo「Dandi dansa」(4)

 「ちょっと待て」と思われた方、そうです。Alvaro EstrellaとAnton Ewaldが2012年にバックダンサーを務めた「Amazing」を歌っていたその人こそ、このDanny Saucedo。2006年にスウェーデンAmerican Idolの「Idol 2006」に出場したことがきっかけとなり、歌手デビュー。ソロ歌手として、そしてボーイバンドE.M.D.のメンバーとして活動を始めました。デビューアルバムであり、ゴリゴリのユーロポップ作品『Heart Beats』がいきなり国内1位を記録、実は2008年にはこのアルバムで日本デビューも果たしています*3


 MelodifestivalenにはE.M.D.として2009年に「Baby Goodbye」で初出場し、3位を記録。ソロでは2011年、2012年と2年連続出場するものの、惜しくも2回とも2位という結果に終わっており、Melodifestivalen 2021では念願の優勝が望まれます。また、2013年にはMelodifestivalenの司会も担当、現在までリリースしたアルバムはすべてトップ3を記録するなど、スウェーデンを代表する男性歌手の一人です。Melodifestivalenとは関係ありませんが、彼の楽曲「Delirious」は純粋に名曲。

Dotter「Little Tot」(3)

 Melodifestivalen 2020では照明を効果的に用いた独特なコレオグラフィーも話題となった「Bulletproof」をパフォーマンスしたDotter。The Mamasと優勝を争いましたが、なんと1ポイント差で2位となってしまいました。Melodifestivalenには2018年の「Cry」で初出場を果たし、今回が3度目の出場となりますが、ここ数年間は彼女の名前を大会で見ない年はありませんでした。Melodifestivalen 2017では4位に終わったMarietteのエントリー曲「A Million Years」にソングライターとして登場*4。「Cry」での初出場を挟み、Melodifestivalen 2018では、2015年のMelodifestivalen/Eurovision優勝者Måns Zelmerlöw*5と「Walk with Me」をインターバルアクトとしてパフォーマンスしました。Ellie Gouldingらを彷彿とさせるユニークな声質も魅力。

 「Bulletproof」でのアイコニックなパフォーマンスで多くのファンを獲得した彼女、今年の出場を望んでいた人も多くいることだと思います(私もその一人です)。ちなみに私、会場でこのDotterビームを浴びてきたので不老不死になったかもしれません。

Efraim Leo「Best of Me」(初)


 Red Velvet「#Cookie Jar」の制作も担当するなど、ソングライターとしても活躍する23歳のシンガーソングライター。Melodifestivalenは初出場となります。近年はFelix SandmanBenjamin Ingrossoなど、甘いマスクの若手男性シンガー枠が常にあったような気がしますが、今年は彼がその枠を担当ということなのでしょうか。

 Melodifestivalen 2021のエントリー曲「Best of Me」は昨年の優勝曲、The Mamas「Move」も担当したHerman Gardarfveがソングライティングを手掛けているということで、期待が高まります。

Elisa「Den du är」(2)

 スウェーデン国内で絶大な人気を誇るダンスバンドElisa'sのボーカリストElisa Lindströmが7年ぶりに出場。14歳の頃にはジュニア版EurovisionであるJunior Eurovision Song Contestのスウェーデン代表を決める大会、Lilla Melodifestivalen 2005に出場した経験も持ちます。

 Melodifestivalen 2014に「Casanova」で出場した際は、惜しくも予選敗退してしまった彼女ですが、今回はどれだけ結果を残せるのか注目です。

Emil Assergård「Om allting skiter sig」(初)

 既にスウェーデン国内では人気歌手としての地位を確立しているEmil Assergårdが満を持してMelodifestivalenに初出場。

 2016年の楽曲「All In」がヒットし、2019年にリリースしたアルバム『Leva livet / En samling』が5位を記録するなど、着実に人気を伸ばしている彼ですが、楽曲はよく言えば懐かしい、悪く言えばダサいものが多め。Melodifestivalenで上位にランクインする楽曲はそういった楽曲が多い印象なので、初出場でどこまで得点を得られるか個人的に非常に注目しているアーティストの一人です。

Eric Saade「Every Minute」(4)

 私がMelodifestivalenにハマるきっかけとなった「Popular」を歌っていたのが彼、Eric Saade。2010年に「Manboy」で初出場を果たしてから、通算4度目の出場となります。Melodifestivalen 2011で披露した「Popular」は見事優勝を収め、Eurovision Song Contestでも3位の好成績を残しました。デビュー時から「これぞEurovision!」といったユーロビート調の楽曲を多くリリースしてきましたが、2013年ごろからはR&B、ダンスミュージックなど様々なジャンルを取り入れた試行錯誤の時期が続きます。2016年の「Wide Awake」こそリミックスバージョンがロシアでヒットしましたが、その後は目立ったヒットが出ず。2020年リリースの自身初となる全編スウェーデン語アルバム『Det svarta fåret』は国内チャートの圏外となってしまいました(めっちゃ好きですが)。


 Melodifestivalen 2019での司会担当を挟んで、4回目の出場となる今回。以前から大ファンである自分としても、今回の大会で爪痕を残して、低迷している人気が回復することを願います。

Eva Rydberg & Ewa Roos「Rena rama ding dong」(2)/(初)

 合計年齢148歳という大御所タッグ。コメディアンとしても知られ、Melodifestivalen 1977(!)に「Charlie Chaplin」で出場したEva Rydbergとミュージカル女優としても活躍するEwa Roosのデュエットです。

 今回のエントリー楽曲「Rena Rama Ding Dong」の「Ding Dong」は、2020年にNetflixで公開されたEurovisionをテーマとした映画『ユーロビジョン歌合戦 〜ファイア・サーガ物語〜』の劇中歌、「Jaja Ding Dong」のパロディーと思われます。制作陣にはAce of BaseやWaldo's Peopleなど懐かしい面々の楽曲を担当してきたAri Lehtonenらが名を連ねています。

Frida Green「The Silence」(初)

 スウェーデン国内で1位を記録する大ヒットとなったBadpojkenの「Johnny G (The Guidetti Song)」でボーカルを務めたことから一躍注目の的となったシンガー、Frida Greenも初出場。

 今まで発表してきた3曲のオリジナル楽曲はどれもアコースティック調のものばかり。今回のMelodifestivalenではどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか期待です。また、今回のエントリー楽曲「The Silence」のソングライターには、Melodifestivalen 2020に「Kingdom Comes」で出場し、3位の好成績を収めたAnna Bergendahlが名を連ねています。

Jessica Andersson「Horizon」(8)

 衝撃の通算6回出場を誇るMelodifestivalenの常連シンガー、Jessica Anderssonが8回目の出場。

 2003年にMagnus Bäcklundとのデュオ、Fameとして「Give Me Your Love」でMelodifestivalenに初出場、見事優勝を果たし、Eurovision Song Contest 2003では5位を記録しました。その後、Melodifestivalen 2006にソロ歌手として「Kalla nätter」で出場を飾るものの、予選敗退、最も直近の2018年大会では「Party Voice」でエントリーし、見事決勝に勝ち進みました。

 今回の「Horizon」は計4回のMelodifestivalen優勝曲を手掛けてきた重鎮のFredrik Kempeが制作に参加しています。

おわりに

 ここまでMelodifestivalen 2021のエントリー楽曲から半分をご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。「歌のうまい人たちがダサい曲をダサいパフォーマンスで届ける」というこの大会の魅力が伝わっていれば嬉しく思います(Dotter辺りはまさにそんな気がします)。

 もしこの記事がきっかけで一緒にMelodifestivalenを楽しんでいただける方がいたら、ぜひTwitterInstagramなどでご連絡ください。一緒に盛り上がりましょう!

 また、友人ソータとのPodcast「カツヤとソータのConfessions on a Podcast」でも約20分でMelodifestivalenについての魅力を語ってみました。もしお時間が許せば、ぜひこちらもチェックしてみてください。

 明日公開予定の「Melodifestivalenについて③」では、Melodifestivalen 2021エントリー楽曲全28曲から残りの14曲をご紹介します)。今回の続編となっていますので、ぜひご覧いただけたら幸いです。それでは、また明日お会いしましょう!

*1:なぜか日本のメディアBARKSでも「スウェーデンが生んだ天才アーティスト」として取り上げられました。

*2:スウィングやシュラーガー、カントリーやジャズなどの影響を強く受けたバンドの総称で、スウェーデンをはじめとする北欧諸国特有のジャンルとして確立されている。(Wikipediaより)

*3:邦題は『恋のハートビート』。

*4:Melodifestivalenではソングライターのラインナップも非常に注目されます

*5:2015年にEurovisionで優勝した「Heroes」はイギリスでも11位を記録するなどヨーロッパ中で大ヒットを記録。プロジェクションを用いた印象的なパフォーマンスはそのあとのEurovision関連パフォーマンスに大きな影響を与えました。