ザ・ライフ・オブ・ワタシ

平凡の中の華やかを

イギリスでの日々

 イギリスでの留学生活が始まり一ヶ月が経過した。本当は日記のように日々を綴っていきたかったけれど、気づいたらもう10月も終わってしまう。昨年同じ大学に留学していた先輩たちが言っていた「一瞬だよ」という言葉を身をもって実感。「待って、待って~」と車を追いかけているイメージが頭に浮かぶ。

 出発前は行きたくない気持ちが先行していたが、到着してからは無理くり前向きな姿勢を貫いたこともあってか、ホームシックを感じることはあまりない。恋人や友人にはとても会いたいけれど、こちらの生活も悪くない。長い夢を見ているみたい。とはいえ、まだ始まって一ヶ月。きっと日本のことが恋しくて仕方ないときだって来るのだろうなあ。「帰りたい」という言葉だけは絶対に言わない、と意地。

 こちらでは、日本特有の息苦しさを感じずに生きられることが有難い。自分がただ勝手に息苦しさを感じていただけかもしれないけれど、ただイギリス社会に染まりきれていないだけかもしれないけれど、それでも毎日他人の目を気にしなくてよいことがとても気楽。みんな他人がどうであるかよりも、他人が何をするかを重視している。自分の意地悪さが少しずつ消えていくのが分かる。無理やりな前向きさが、自然な前向きさになってきた気がする。

 出発前後はとにかく友だちができるかが不安で、できる限りの時間とお金を友だち作りに費やした。でも結局友だちは作るものじゃなく、できるもので。あれやこれやと画策するのではなく、オープンな心でいけたら。そもそも友だちを選べる身分でもない。謙虚に図々しく生きたい。

 今は友だち作りよりも大学の勉強や日々の家事の方がよっぽど厄介だ。

 大学では学部生として留学をしているため、現地の学生と同じ内容を学んでいる。交換留学生の特権で好きな授業を選べるのだが、それでも英語で学部生レベルのことを学ぶのはとても大変。11月はじめには提出物やテストが幾つかあるので、怠惰に負けずに頑張る。

 初めての一人暮らしで、しかも日本では祖母に家事を頼りっぱなしだったので、すべてが手探りの毎日。自分の無力さにほとほと困り果てている。掃除は面倒だし、料理は皿洗いまでが料理だし、当たり前の生活ってこんなにも大変なのか。日本から持ってきたアイロンを使おうとすれば火花が散ってブレーカーが落ちるし(本当に死ぬかと思った)、シャワー室の壁から水が漏れているし、さっそくトラブル続きでびっくり。

 台湾好きが高じて、Taiwanese Societyというサークルに入った。みんな日本が大好き。もちろん日本版のAnglo-Japanese Societyにも所属していて、やはり日本が好きな学生が沢山所属している。自分個人としては日本のカルチャーは大好きだけれど、社会自体はあまり好きとは言えないし、政治に関して言えば嫌いなことの方が多いと思う。でも、それらをこうして好いてくれている人たちが沢山いて嬉しい。「日本に9回行った」というツワモノもいた。何十年後もジャパニーズだと胸を張って言えるといい。

 楽しいとはいえ不安になることはまだまだあって、週末に予定が入ってないとなんとなく焦ったりとか、フラットメイトたちとあまり会話できていないこととか、くだらないかもしれないけど気になってしまう。でもこちらで手に入れた前向きさを武器に戦っていきたい。

 

 柴田聡子の気分。